ここは美容院ですから、清潔感や、新しい自分に変身するための明るい希望が持てる空気を、常に淀みなく保つ必要があります。
その為にもいい絵を飾っておきたいですね。
孫 家珮作品を飾っていただいております新宿1丁目にあるカットハウス「ビクトリー」で、 経営者の伊東 勝子様にお話を伺いました。私も個人的に、着物を着る際など大変お世話になっております。
( 聞き手 顧 定珍)
顧:シルクランド画廊、孫 家珮先生の作品との出会いについて。
伊東 近くに住んでいるお客様が孫先生の作品を買われて、普段から私が絵が好きなこともご存知で、見に行くよう薦めて下さったのがきっかけです。そこで初めて見た朝陽の昇る景色は今でも忘れられないですね。故郷の青森で昔見た懐かしい景色が、朝陽の作品からは蘇ってくるんです。
顧:かなり長い時間じっくりとご覧になられていたことを記憶しています。
伊東:そうでしたね。本当に絵の前から離れられないくらいの印象深い作品でした。
時間がある時は、美術品全般、特に目的を決めず色々と見て歩きますが、シンプルで余分な説明が省略されたものや、色彩的にも色数の少ない作品がいつも印象に残ります。
顧:孫先生と初めてお会いになった時の印象をお聞かせください。
伊東:2年前、セントラル美術館での来日 年の記念展でお会いした時に先生の朴訥とした、気取らない姿がとても印象的で、まさしく素朴で静かな作品そのもののお人柄と感じました。
顧:孫先生の作品以外にも飾っていらっしゃる絵は。
伊東:初めて購入した絵は井上 公三先生の、やはりシンプルな色調の静かな作品で、他にはアメリカの女流作家の作品なども求めたことがあります。今や自宅では全ての部屋にそれぞれ飾っています。
顧:そういった作品を選ぶ基準はありますか?
伊東:知名度云々ではなく、自分の感性に響くものに尽きます。これで今まで飽きた絵は一枚もありません(笑)。
顧:伊東様が、お店のお客様にもシルクランド画廊をご紹介していただいたりしていますよね。中には孫先生の作品をお求めいただいた方もいらっしゃいます。
伊東:皆さんが、お店で孫先生の作品を本当に楽しんでいらっしゃることが嬉しくて、時には見る角度をアドバイスしたり、時間帯によって照明を落として見ていただいたりする内に皆さん感動していかれるんです。
絵を通してお客様との会話が生まれる
顧:私たち以上に説得力あるセールスをしていただいていたんですね(笑)美容院で絵を飾ることによって、伊東様が得られることは何でしょうか?
伊東:絵を通して、必ず会話が生まれますからお客様との距離が一気に縮みますね。普段なかなか絵を見に行けない方も、本質的に皆さん絵がお好きなんですよ。それと、お客様をおもてなしするためには、 美容院に限らずそれ相応の場所としての空気が求められるのではないでしょうか。
ここは美容院ですから、清潔感や、新しい自分に変身するための明るい希望が持てる空気を、常に淀みなく保つ必要があります。その為にもいい絵を飾っておきたいですね。
顧:伊東様にとって、アートとふれあうこととは。
伊東:とても大切なこと。眠っていた部分の感性や想いを引き出して、磨いていけるもの。お店のお客様にも、潜在的に絵が好きな方に、少しでも絵とふれあう機会を作ってあげて、絵とふれあう喜びを気付かせてあげたいですね。
顧:孫先生に今後期待することとは。
伊東:先生には、変わらず、今まで通りであって欲しいですね。描きたいと思うものを描き続けて欲しいです。画風が変わっても、それが先生の描きたいものであれば、新しい展開も期待しています。
顧:営業時間中の貴重なお時間を裂いていただき、本当にありがとうございました。
ギャラリー通信#30(2010年9月) インタビュー記事より
カットハウス ビクトリー 新宿区新宿1-18-17 関口ビル2F 03-3354-8444