自分たちが感動できれば「この一点」になるでしょう。
稲毛善四郎様は、小児科クリニックを江戸川区平井で16年前から開業しています。奥様とおくつろぎの休日に、ご自宅でお話を伺いました( 聞き手 顧 定珍)
顧:シルクランド画廊との出会いは偶然だったそうですね。
稲毛:2004年4月です。夫婦で通りかかって、ジャーシャン・ベイ先生の作品が目に入りました。ここに画廊があるんだと思って入ったら、花の絵を見て、いっぺんに気に入りました。色彩が素晴らしかったんです、今リビングにかけています。
奥様:先生がオーストラリアにお住まいのアーチストだからか、絵が明るい感じがしますよね。
稲毛:ジャーシャン・ベイ先生の描くカフェやレストランの情景を見ていると、本当にオーストラリアの広大さ、温暖な気候、僕が好きな海、海辺や船の雰囲気が目に見えるような気がします。
寝室に飾っている孫家珮先生の作品も、眠りからさめて目に入ると「いいなぁ」と思うんですよ。忙しいと心の余裕がなくなるし、患者さんのことを考えていて、あの診断で正しかったのか、と夜中に目が冴えて眠れなくなることもあります。
そんな生活に素晴らしい絵がある、というのは、何事にも代えがたいと思うんです。
顧:ご夫婦そろって絵がとてもお好きですね。
稲毛:彼女は父親が趣味で油絵を描いていたためか、センスもいい。僕は留学生だった頃にメトロポリタン、大英博物館、ルーブル……本当によく見ました。でもその後、絵のことは忘れていました。好きな研究に打ち込んでいたからお金もなくて……子供が、絵本に載っていたメロンを指して「スイカ」と言ったくらいです、食べさせたことがないから。
開業してから数年は、僕も馬力のきく年頃だったし3~4時間睡眠の毎日でした。病院が落ち着いてくると、今度は年をとってきた母の周辺のことを引き受けるようになってまた大忙し。一段落したのが04年、仕事だけでこのまま終わっちゃうのかなぁ……と思っていたらシルクランドさんに出会った。



写真左:孫 家珮作品 中央:ジャーシャン・べイ作「豊かな時間」の前で 右:王 元鼎作品とジャーシャン・べイ作品
顧:孫家珮、江屹、王元鼎……いろんな作家の作品を家中に飾っていただいていますね。
稲毛:インスピレーションですよ、いつも即決ですね。ある個人美術館に行ったら素晴らしくて、夫婦そろって大感激したんです。そうしたら後日、その大家の小品を買わないかと勧められたけど、心に響かなかった。絵の専門的なことはわかりません。わからないけれども、モチーフなりタッチなり、自分たちが感動できれば「この一点!」になるでしょう。ダ・ビンチやラファエロはもちろん素晴らしい。でも無名でも素晴らしい才能を持った方はたくさんいる。顧さんはその懸け橋ですね。スタッフの皆さんも、一人ひとりと作品の感動を分かち合える感じがする。私達は紹介してもらえなきゃ作品に出会えない。
ギャラリー通信もほとんど取ってあって「この先生の絵も見たいね」と話したり、何度も見返したりするんです。
画廊はたくさんあるけど、私達は顧さんの眼力を信じています。お世辞抜きで、ご縁があってよかったと思っています。
顧:画商冥利に尽きるお言葉をいただき、これからの励みにさせていただきます。本日は本当にありがとうございました
ギャラリー通信#25(2009年12月) インタビュー記事より