絵から受けるエネルギーが凄いなと思いました。
そして「修行者」は居間の壁に掛ける事になり、いつも私を厳しく見ていてくれます。(佐藤様談)
佐藤永様は、歴史溢れる武家屋敷や田沢湖など、数多くの名所があり、 “みちのくの小京都”と呼ばれる秋田県角館市にある「田町武家屋敷ホテル」を経営されています。 過日、角館のご自宅とホテルで取材させていただきました。( 聞き手 顧 定珍)
顧:東 強先生の「修行者」の絵を居間に飾られていますが、どのようなところが気に入られましたか。
佐藤:やはり、目ですね。絵は第一印象ですよ。この目の鋭さに強烈に惹かれたんです。
最初はそれだけでした。自分は大体いい加減な人間なので、シルクランドさんからのギャラリー通信にあった「修行者」の目を見た時は、はっとしましたね。それが彼との出会いでした。
早く本人に会いたいと思い、初日に銀座のギャラリーを訪れ実際に見たらやはり圧倒されました。絵から受けるエネルギーが凄いなと思いました。そして「修行者」は居間の壁に掛ける事になり、いつも私を厳しく見ていてくれます。
現在、メインで経営していた会社の社長を辞めたんですが、この絵を購入した時はまだ会社で獅子奮闘してやっている時だったので、やはり共通しているものがあったんでしょうね。
顧:私も自分の仕事部屋には、エネルギッシュな絵を飾っています。佐藤様がこの「修行者」という絵を選んだのは、きっとご自分を奮い立たせるようなエネルギーをもらったのではないかと思っていました。
佐藤:まさにそういう感じでした。「修行僧」のあの目からそういうものを感じ取ったんでしょうね。絵はその時の自分の気持ちにも左右されますから。安らぎたいとか、勇気をもらいたいとか。
今は社長をやめてゆっくりしていますが、この絵を見ていると「ああ、ああいう時があったな」と、その時のことを思い出します。この「修行者」は、何かに向かう鋭さや姿勢が凄いですからね。

顧:この居間はこの「修行者」を飾るには素晴らしいスペースですね。
佐藤:この家は生活しようと思って造った家ではなくて、音楽を聴くために造った空間ですから天上も高いんです。音は締め切ると音が抜けていかなくて駄目なんですよ。ですから、エネルギー溢れる「修行者」を飾るには相応しい空間だと思います。絵は空間もとても大切ですからね。
顧:初めて絵画をお求めになられたのはいつ頃ですか。
佐藤:26歳の頃です。観光で行ったパリのモンマルトルで出会った無名の作家でした。(写真3)面白い絵だなあと思って、一度ホテルに帰ったんですがやはり印象深くて、次の日にもう一度その絵を見に行ってその場で2点求めたんです。
顧:いろいろな作家の絵を飾られていますね。
佐藤:私は、作家を問わないです。絵はその時の出会いですからね。ネットやDMなどで気に入った絵があると画廊に見に行って、自分で納得すれば求めます。
顧:ホテルの玄関から、廊下、レストラン、各客室などいたるところにも肉筆の絵が飾られて、きっとそれぞれ素晴らしい出会いと感動があったんでしょうね。レストランには4点も富士山の絵が飾られていますが、何か特別な思い出は。(写真4)
佐藤:46年前、高校三年の岐阜国体の帰り東海道線の車窓から見た夕日で七色に輝く富士山の感動は今でも忘れる事が出来ません。同乗した他校の選手、監督も「うわぁ~」と言う驚きでした。富士山から遥か遠い秋田からはなかなか逢う事の出来ない僕の富士山への想いが、この富士の油彩画にはあるんです。
顧:ホテルの支配人から伺ったところ、お客様から絵のことについていろいろ聞かれるそうですね。
佐藤:音楽と同じで、絵に無関心な人はいないのではないかと思いますよ。
顧:今回の訪問で、私どもが紹介した作品が今も愛されていることが確認できて、画商として何より嬉しいことです。
ギャラリー通信#35(2011年2月) インタビュー記事より

秋田角館 田町武家屋敷ホテル http://www.bukeyashiki.jp