全体的に屏風絵のような金地の背景に、それでいてモダンな彩色で細やかに描きこまれていて、とてもバランスの良さ、センスを感じる作品という印象でした。(清葉様談)
東京の春の風物詩でもあり、芸者衆が一堂に会し唄と踊りを披露する豪華絢爛な第88回「東をどり」の舞台を目前に、お稽古、お座敷、そして自身のお店の開店前のお忙しい中、お時間を作っていただきました清葉(清元 延三葉)様に、本日はお話をうかがいます。( 聞き手 顧 定珍)
顧:一昨年から新橋・木挽町で会員制のBARを経営しておられますが、「東をどり」の舞台にもなる新橋演舞場の目と鼻の先ですね。舞台の役者さんや芸術家もお見えになるのではないですか?
清葉:役者さんや作家さん以外に、画家の先生方もお出でになりますよ。中でも堀文子先生は昔からとても好きなアーティストですが、偶然というか、丸山 友紀先生が師事を仰いだ日本画の先生は学生時代に堀文子教室で学ばれていたんですってね?
顧:そうなんです。どこかで引き合うものが繋がるものですね。丸山先生の作品との出会いは2年半ほど前でしたでしょうか。
清葉:東をどりのお稽古場へ行く途中にウィンドウ越しに素敵な絵がありまして、中に入ると丸山先生のインコの作品にひと目ぼれした記憶があります。あの時はお店を始めるとは思っていませんでしたが、内装を考えているうちにこの絵がピッタリだと思い、今ではこの絵にあわせてお店をデザインしたのかな?と(笑)。全体的に屏風絵のような金地の背景に、それでいてモダンな彩色で細やかに描きこまれていて、とてもバランスの良さ、センスを感じる作品という印象でした。
顧:このお店に飾っておられるベニコンゴウインコの作品ですね。和風モダン様式の内装にとても映える色調で、以前丸山先生と一緒にお邪魔した時に先生も大変喜んでいらっしゃいました。やはり、絵をご覧になる対象は日本画が多いのですか?
清葉:もともと日本画は好きでよく拝見します。仕事柄、日々お着物を着させていただいておりますので、着物や帯の柄の注文を出すのに上村松園先生などとても参考にもなるんです。
顧:この帯の牡丹は・・・
清葉:この牡丹は加山又造先生の作品からのヒントを得ています。お座敷でも絵の話題に及ぶことは多々ありますし、美術に親しんでいることで仕事の上でもより楽しい場を作ることが出来るように思います。
顧:その後、王様ペンギン、海老など素敵な作品を増やしていただきましたが、「伊勢海老」の作品は先生にリクエストしていただいたんですよね?
清葉:歌舞伎では以前から成田屋さん(※江戸歌舞伎の代表的な家系市川團十郎家の屋号)とご縁があって、親しくさせていただき、お世話にもなっていますので、海老蔵さんを応援する意味も込めてという思いもありましたが、とても評判いいですよ。
顧:美術品を見て楽しまれるご趣味をお持ちになることで、日々の生活に様々な影響がもたらされていらっしゃるようですね。
清葉:日本画だけでなく、西洋のものにも結構興味はあるんです。中でもクリムトの作品に見られる装飾性は時には日本に通ずるものを感じますし、丸山先生に惹かれたのも金地を生かした構成がもともと好きだったのかなって、自分なりに納得しています。ルネ・ラリックによる「噴水の女神」などの女性像が好きで、ガラス作品にも以前から興味があります。
顧:ラリックのガラスのオブジェもカウンターの上で店内の空気に、いい意味の緊張感や気品を醸していますね。美術品と対話できるくつろぎの空間の演出が行き届いていて私たちも大いに参考になります。
最後に、丸山 友紀先生は30代という若い世代のアーティストの中では大変ファンの多い人気作家でもありますが、今後作家に期待することはありますか?
清葉:初めて作品を見たときは既に円熟期にあるアーティストかと思ったくらいでしたが、その後ご本人にお会いして、お若くて可愛い先生だったので驚きました。
きっとまだまだその若さで色んな可能性を模索していかれると思いますが、個性を打ち出すことに気持ちが前のめりになり過ぎないで活動していって欲しいです。最終的には、技術もしっかりしてらっしゃるから、いわゆる〝古典〟を見つめなおす方向を突き詰めて制作に励んでもらいたいという風に感じています。これからもとても楽しみにしています。頑張ってください。
顧:本日は大変お忙しい中、お時間を割いていただき本当にありがとうございました。
※会員制BAR「万葉」と清葉さんの紹介が、5月1日発売の雑誌「Pen」に掲載されました。
ギャラリー通信#48(2012年6月) インタビュー記事より

写真右中央が出演する清葉様