幼い頃は木登りが好きで、「南フランスに居る感じ」と、木の上で空想していました。(笑)
秋吉:絵の背景になっている場所でもあり、好きな場所は南フランス。ミモザ村、ヴィルフランシュ・シュル・メールが一番気に入っています。
● 8歳で油絵を習い始めたとのことですが、絵に目覚めたきっかけを教えてください。
秋吉:小さい頃は手芸が好きで、端切れやリボン、ビーズでよく遊んでいました。はじめはファッションデザイナーになりたいと思っていたところ、叔父に「デザイナーになるには絵が描けなければいけない」とアドバイスを受け、抽象画家の中島千恵先生の教室に通うことになりました。油絵の具の臭いも好きでしたし、アトリエの雰囲気もとても気に入っていました。そして自由に絵を描いていたら先生が褒めてくださるので、通っているうちに絵が上手になっていき、「絵の上手な人」と言われるようになったことが励みになって、それが今まで続いています。
● スイスで暮らした経験で、絵を描くことについて変化したことは何かありますか。
秋吉:「絵描きになりたい」とはっきり思っていたわけではなかったのですが、美術大学には行きたかったので、就職のことも考えグラフィックデザインを勉強しました。父親の知り合いにグラフィックデザイナーの方がいらして、大学卒業後にはスイスに行き、その方のもとでグラフィックデザインの仕事に就きましたが、そこで突然、「あなたはグラフィックデザインに向いていないから日本に帰って絵を描きなさい」と言われて帰国しました。帰国後に絵本の先生をしたりしているうちにいろいろなアーティストの方と知り合って、やはり絵を描く方向になっていきました。
● 猫との出会いもスイスの滞在時ですか。
秋吉:いいえ、猫は小さい頃から好きで、近所では「猫好き」として有名でした。スイスではホームステイ先が猫好きの方の家で、その家には猫グッズが3千点もありました。モーゼル夫妻とおっしゃって陶芸などもやっていてアーティスティックで素敵なご夫婦でした。初めて行った海外がスイスで、また仕事もし、ヨーロッパ各地も旅行しましたので、スイスの影響は大きいですね。
● 好きな国、猫が絵になる国はどこでしょうか。
秋吉:ヨーロッパはすべて好きですね。
ニースは気に入っていて3回行きました。絵の背景になっている場所でもあり、好きな場所は南フランス。ミモザ村、ヴィルフランシュ・シュル・メールが特に気に入っていますね。イタリアではカプリ島。カプリ島に「ホテル・ガット・ビアンコ(白猫ホテル)」があり、看板猫がいるお店がたくさんあります。ギリシャのサントリーニ島にもたくさん猫がいます。フランス、イタリア、ギリシャではたくさんの猫に出会いましたが、特にギリシャは多かったです。スイスのルガノとロカルノも絵になる所です。
●画材や技法についての独自のこだわりは何かありますか。
秋吉:油絵の具が好きで、描き方としては薄塗りで色の深みを出すために何度も塗り重ねていくので、制作にはとても時間がかかります。滑らかで発色が綺麗なこともあって、絵の具はフランス製のものを使っています。グラフィックデザインを学んでいたので、絵や構図もデザイン的になっているかもしれませんね。風景の中の光と影、猫のふわふわした感じが好きです。大切な猫の眼を描くときは時間がかかります。より良い絵を描くために、日々自問を繰り返しています。
●東京以外でも展覧会を多く開催されていますが、お客様との感動エピソードがあればお聞かせください。
秋吉:何度もご夫婦で観に来られた方から、「リビングに飾ってある絵を観るたびに本当に嬉しい気持ちになり、何度も何度もつい観たくなる、そんな魅力のある素敵な猫さんたちです」というようなお手紙を頂きとても嬉しかったです。また著名な方で何点もご自宅に絵を飾って下さっている方は、テレビや雑誌などのメディアで私のことを紹介して下さいました。私の描いた絵が大切にされていることを思うととても嬉しいです。
● 好きなアーティスト、影響を受けた人物や出来事があれば教えて下さい。
秋吉:画家さんでは落田洋子さんが好きで、毎回ギャラリーでの個展を観に行っています。トレンツ・リャドさんも好きで、ご存命のときにお会いしたことがあります。高校生のときにはアンリ・ルソーなどが好きでした。音楽・特にピアノの音、ミュージカル、バリ島のエキゾチックな雰囲気も好きです。幼い頃は木登りが好きで、「南フランスに居る感じ」と木の上で空想していました。(笑)読んでいた本などもヨーロッパのものでしたし、演劇でもシェークスピアが好きでしたから、中世のヨーロッパに魅かれているのかもしれません。地中海沿岸を旅行した時には、いつも懐かしい感じがします。不思議な縁を感じますね。
● 展望などがありましたら。
秋吉:これからもあちこち旅をしながら、美しい風景と魅力的な猫の絵を描いていきたいです。そして絵を観て下さる方々に幸せを届けられるようにと思っています。
ギャラリー通信#77(2014年12月) インタビュー記事より