きものに袖を通す機会は少ない時代ですが、どの家庭にも大切にしている一着はおありなのではないでしょうか。 今回ご紹介する長野かほるさんの「和布の衣」シリーズは、そんな愛着あるきものたちを洋服によみがえらせた作品です。 織りや刺繍、染など、それぞれのきものが持ついろんな個性も、いったん解いて布に返せば、互いを生かしあい、引き立てあう要素となります。 美大時代に洋画を学んだという長野さんのセンスによって、和布の風合いや色が眠りからさめたように輝くのを見ると、ファッションもまた芸術のひとつだなぁと思わずにはいられません。 お手持ちのきものの活用についてもご相談に乗ってくださるそうですから、箪笥の中で眠っているご自分のきものを思い浮かべながらご覧になるのも楽しいかもしれません。 重ね着が快く、布に包まれる幸せを感じる秋の日に、壁を飾る絵画との競演をどうぞお楽しみください。
※写真:紅型小紋のリバーシブル・フード付きハーフコートを着用
2010年2月
シルクランド画廊 顧 定珍