大竹 卓民 展 墨象 - 都市迷離 | Takumin Otake Exhibition
会期:2022年6月19日(日)~7月2日(土) ※最終日は午後5時閉場
作家来場:6/19(日) 23(木) 25(土) 28(火) 7/2(土) 午後1時半~5時在廊
開廊時間:午前11時~午後7時30分(土日、祝祭日は午後6時30分閉廊)
大竹 卓民
《都市迷離‐L》 186×90cm×4枚 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐h》 43×71cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐u》 44.5×44.5cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐s》 44.5×44.5cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐f》 71×48cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐x》 90.9×116.7cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐w》 90.9×116.7cm 水墨画
大竹 卓民
《都市迷離‐o》 28×41.5cm 水墨画 売約済
山下裕二「筆のコントロールを超えて」
筆のコントロールを超えて
山下裕二
2022年4月30日、私は大竹卓民のアトリエを訪ねた。6月の個展に向けて、絵を観ながら会話する映像を収録するためだった。彼と会ってじっくり話す機会をもったのは、5年ぶりぐらいだろうか。
はじめて会ったのは、1991年。私も彼も32歳のころ。私は武蔵野美術大学の非常勤講師で、彼は留学生だった。中国・北宋時代の山水画について講義をしていたのだが、熱心に質問してきたのが、いまだ日本に帰化する前の彼だった。以来30年余り、これまでその画業を注視してきたが、今回アトリエで制作風景を取材して、彼が新たな一歩を踏み出そうとしていることがよくわかった。
幼いころから中国で書画の修練を積んできた彼は、筆を完璧にコントロールできる人である。現代の日本画家で、彼ほどのレベルで筆法を身につけている人はまったくと言っていいほどいない。そんな彼が、筆法を封印して、墨と水が織りなす偶然性を基盤とした画面を創り出そうとしているのである。
《都市迷離》のシリーズは、正方形の紙をスタンプして、その重なりによってビルのような造形をつくりだそうとするもの。滝の絵は、くしゃくしゃに丸めた紙に墨をつけ、それを押しつけることによって断崖の岩肌を表したもの。いずれも、筆のコントロールによる造形を拒否して、偶然性による墨のにじみなどを活用しようとする方法だ。
つまり、完璧な筆のコントロールによって「なんでも描ける」彼は、そんな自分を超えるために、完成作が予想できない「自分では描けない絵」を自分で描こうとしているのだ。そんな彼の姿勢を尊敬する。
お互いに老境にさしかかった。別れ際、彼は「あと10年もしたら、なんの目的もなく集まって、私が絵を描いているところを見せて、一緒にお酒を飲みたいですね」と言った。そんな日が来るのが楽しみでならない。
山下裕二先生:
大竹先生が武蔵野美術大学在学中に講師を務められ、現在は明治学院大学教授、また美術史家として活躍中。
(写真左:山下裕二先生 右:大竹卓民先生)
大竹卓民 略歴
1958年上海市生まれ
1987年来日 武蔵野美術大学日本画科卒業、筑波大学大学院芸術研究科修士課程を修了
1995年より春季創画展、創画展等日本画公募展に出品
1998年より国内外にて個展・グループ展開催
池袋東武百貨店、日本橋高島屋、上野松坂屋他、上海劉海粟美術館、
北京・中国美術館、三度半画廊、銀座シルクランド画廊、
北京798芸術区芸術工廠、上海油画彫塑院美術館他
中国中央美術学院・上海美術学院岩彩研究班招聘教授を歴任
現在 敦煌研究院美術研究所客員研究員、
東京芸術大学大学院保存修復日本画研究室非常勤講師
論文・出版
《中国岩彩絵画概論》中国・高等教育出版社 2016.11
《卓民岩彩画》中国・江蘇美術出版社 2003.8
《卓民水墨画》中国・河北美術出版社 2018.9
《宗達の謎》日本・日貿出版社 2021.8
共著・分担執筆
《糸路・岩語、中国岩彩絵画文献展作品集》中国・河北美術出版社 2016.1
《跡象表意-岩彩絵画創作案例》中国・高等教育出版社 2018.8
水墨画関係によるテレビ番組出演
2012.10.7 NHK日曜美術館「横山大観を支えた匠たち」に出演
2014.2.23 HK日曜美術館「画鬼と呼ばれた絵師弟子コンドルが見た河鍋暁斎」に出演
2014.4.27 テレビ東京「美の巨人たち-国宝・円山応挙<雪松図屏風>」に出演
2017.10.8 NHK日曜美術館「目指せ! 天下一の絵師集団狩野元信の戦略」に出演
2019.6.8 テレビ東京「新美の巨人たち・長沢芦雪「虎図」に出演
2021.10.12 NHK総合テレビ「クローズアップ現代<雪舟601年目の真実>」に出演
2021.12.5 NHK日曜美術館「発掘!放浪の水墨画家篁牛人」に出演
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主な試みとして、墨を浸した正方形の紙を繰り返しスタンプした輪郭が幾重にも増殖していくかのような連なりを、都市の光景として創出した作品群を筆頭にご覧いただきます。
そこには墨痕で造形することへの問いを作家自身へ投げかける大いなる探求心が、これらの作品からうかがい見れることでしょう。