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シルクロードの結晶 ~敦煌・砂漠の大画廊を訪ねて ~

シルクロードの結晶 ~敦煌・砂漠の大画廊を訪ねて ~

4月下旬、新緑まばゆい東京を離れ、中国・敦煌に行ってきました。

「砂漠の中の大画廊」とも呼ばれるこの世界遺産には、700以上の洞窟があり、そのひとつひとつに設えられた仏像や壁画など、壮大な仏教美術を見て来ました。 現地で「中日芸術家シルクロード仏教美術共同考察団」メンバーの25名の画家と合流しました。彼らの活動拠点は中国や日本など様々ですが、全員、鉱物を砕いてつくる「岩彩」を使う画家です。

「岩彩」は、日本では「日本画」に欠かせない画材になっているのに対し、中国では水墨に押されて存在感が小さくなっています。「砂漠探源」と銘打ったこの旅で、画家たちは西安の兵馬俑や新疆ウイグル自治区なども巡り、日頃から親しんでいる画材が、数千年の時を経るとどんな表情を見せるものかを目に焼きつけていました。 敦煌の壁画は、テレビで見知っているつもりでしたが、実際には想像を絶する、とてつもなく大きなスケールと素晴らしさでした。 経年変化もまた味わいがあり、修復されて色鮮やかな絵柄よりも、古びて色あせた部分のほうが現代の美意識に通じるものを 感じました。

砂漠に点在する岩山にまず洞窟を掘り、その中に大仏さまを彫り出し、鮮やかな岩彩の壁画で彩る ――私達は懐中電灯で壁画の絵柄を追いながら、極楽浄土行きを願う古人の、そのエネルギーに圧倒されました。 そして古人のまっすぐな信仰のかたちに心洗われる思いで敦煌を後にしました。 ギリシャからイラン、インド、そして中国からもたらされ、長い時をかけて渾然一体となった文化には、 単一のものからは生まれない濃さがあります。 東西の風が行き交うシルクロードの街・敦煌で、東西文化は融合してまた新たな結晶になっていました。 あの壮大な時空にたたずむ仏教美術に接して、同行の画家たちの心にはいったいどんなインスピレーションが 湧いていたのでしょう。

シルクランド画廊も、画家の情熱や発想に歩み寄ったり、国を問わずに交流したりすることで、 美術界のシルクロードとなりたいものだと思いました。

 

  2006年4月
                              シルクランド画廊  顧 定珍