さて、私は先月富士山や八ヶ岳を一望できる素晴らしい韮崎大村美術館を訪ねました。ノーベル医学・生理学賞を受賞された大村智先生が半世紀にわたり蒐集した絵画・骨董の数々を収めるために特許料を元に開設し故郷韮崎市に寄贈した美術館です。
美術館のホームページに館長を務める大村先生のごあいさつが掲載されています。 「もし私の人生に美術品との出会いがなかったならば、それはさぞかしつまらないものになっていたでしょう。悩み苦しんでいるとき、あるいは精神が彷徨えるときなど、私は いつも美術品に触れることで、自分を見失わずにいられた気がします。そして、それらは常に私の心を和ませ、まるで深呼吸したあとのような晴れた気持ちにさせてくれます。 この様に当館収蔵作品は、私にとって一点一点がかけがえのない想い出深いものばかりであり、多くの作家たちとの巡り会いをとおして感銘した、作家の生き様そのものが伝 わってまいります。」 ※1
またご著書『人生に美を添えて』では、芸術が人の魂を救うこと、ヒーリング・アートの効能を挙げて、北里大メディカルセンターで、理事を長年務めた女子美術大学の協 力の下、ご自身の好みに偏らない、絵のある環境作りを実践していらっしゃることを知りました。
留学当初の私に美術が生きる力をくれた経験を思い出し、また画商としてずっと大切にしている信条を肯定されたようで、驚き、おおいに感激しました。 「私はもっと美術を世の中のいろいろな場面に登場させる努力をしなければいけないと常々思うのです」 ※2との言葉は、節目を迎えた私どもを励まし、美術界の未来まで明る く照らす贈り物です。魂をうるおす絵を、ひとりでも多くの方に届けたい――大村先生の銅像の横に、気持ちをいっそう強くしています。
シルクランド画廊は、おかげさまでこの2月に開廊13周年を迎えます。かけがえのない絵と出会う喜び、皆様おひとりおひとりとのご縁が、私どもの歩みを今日まで進め てくださいました。スタッフ一同、心より御礼申し上げます。 今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
写真:顧定珍 韮崎大村美術館入口にて
平成28年2月吉日
シルクランド画廊 顧 定珍
※1出典:韮崎大村美術館 http://www.nirasakiomura-artmuseum.com/gt.html
※2出典:大村 智、『人生に美を添えて』、生活の友社、 2015年、P12