母国で化学教師をしていた私が、日本で画商として20年、そして銀座に開いた画廊を10年、やってこられたのは、素晴らしいお客様方に恵まれたおかげにほかなりません。心より、厚く御礼申し上げます。10年間、130回の企画展を開催し、ギャラリー通信は57回発行いたしました。世界で活躍する中国出身の画家たちが描く作品、また「曜変天目」の復元に成功した林恭助さんによる北京・中国美術館での個展のお手伝い、日本人作家の展覧会を企画するなど、「日中友好の懸け橋」となることも欠くことのできない大切な軸となりました。
中国に生まれた私が、美術と深くかかわるようになったきっかけは、日本でのこと。勉強とアルバイトに明け暮れた留学生時代、信州の北澤美術館で巡り会ったドームやガレの作品の美しさに目を奪われ、いつのまにか渇ききっていた心が一気に潤って、涙がこぼれるような気持ちになったことでした。2011年の東日本大震災も忘れてはならない出来事です。悲しみや絶望から立ち直ろうとする過程の中で、知らず知らずのうちに芸術の力を必要としている、かつての私のような人々は大勢いるのではないでしょうか。
“一期一絵”を支え、心のオアシスとして、素晴らしい出会いと笑顔が生まれる場でありつづけること――10周年は、あらためてその使命を果たし、これまでのたくさんのご恩に報い、新しい道をひらくエネルギーを放つ場となる節目を迎えられたことへの感謝、そんな想いを温めています。
画廊の扉を大きくひらいて、心に寄り添える一枚をお届けしてまいります。皆さまとともに、喜びと笑顔の日々を重ねられますように!今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
平成25年2月
シルクランド画廊 顧 定珍