Artist Now                                                                      SILKLAND GALLERY
TOPお問い合わせサイトマップ
     
  展覧会一覧へ作家一覧へ
     
 

生き生きとした僕の理想の舞妓に

少しでも近づいていきたい。

顔の表情、着物の美しさ、点描にもに出来る表現、
僕だけの顔(表情)を目指しているんです。
そして、生き生きとした僕の理想の舞妓に
少しでも近づいていければと思います。

 

 
佐藤 哲郎 先生
Tetsuro Sato Interview
 
 
聞き手 シルクランド画廊
顧 定珍、 久保田 和也

interview by Teichin ko
and Kazuya Kubota
     

先生が若い頃、師事された先生方との出会いを教えて下さい。

児島善三郎先生との出会いですが、 僕が中央美術学園でお手伝いをして
いるとき 、 当時の学園長のお宅に下宿することになり、 その頃取材などに
伺う内に名だたる先生方とのご縁があったわけです。それで絵を見てもらう
機会に恵まれたんです。

評論家の今泉篤男先生、元京都国立近代美術館の館長をされた方ですが、 この方には亡くなるまでずっと絵を教わりました。

  佐藤哲郎先生
アトリエにて (2010年8月撮影)

また、東郷青児先生にも原稿を取りに行った時などに、 絵を見てもらったりしました。
まだ二十代でしたから、 周りの方々からいろんな意味で可愛がってもらいました。

 

戦後、画家を目指されるということは大変なご苦労があったのではないでしょうか?

僕は、エンジニアになりたかったんですが、戦争が終って帰ってきたときには、全てが変ってしまっていた。
次になりたかったのが絵描きだったんです。
一番苦労したのは、お金が入らないこと。絵で生活をするっていうのは大変なことだったんです。
一般の人が絵を買うっていうのは少なくて、コレクターや美術館など、そういうところしか買わない時代でした。
しかし時が経ち、文化が変り、絵も大衆化し、一般の方が自宅で絵を楽しむようになってきたんです。
ちょうど、僕もその頃力が出てきた時期だったので、タイミングがよかった。

 

点描といえば、ジョルジュ・スーラなどが有名ですが、点描の魅力をお聞かせ下さい。

昔は、今みたいに絵の具の種類がなかったので、きれいな紫の色を出そうとしても、色が無かった。
紫だったら、原色の青と、赤との生の色を隣り合わせにして紫に見えるようにしたのが点描の始まりなんです。
スーラっていうのは、原画を見ればわかりますが、色を結構混ぜて、点描でおいてあるんですよ。
それで、今泉篤男先生に、僕は「こういう軟らかい絵を描きたい」って言いましたら、
「色を混ぜて軟らかくするんだったら誰でも出来る」って今泉先生は言うのです。
原色の強い色を自由に使い、それでいて軟らかい感じを出して本物だと言われたんです。
しかし、それがとても難しくて、それこそ何百枚って描いて、結局、点描しかないと思い、点描画を始めたわけです。
それと、僕の絵は、もっていき方が日本画と同じなんです。
いわゆる、陰影を描かない。
児島善三郎先生によく言われました。「色のハーモニーだから、影なんかつけちゃいけないんだ」って。
日本画はもともと影がないのに、急に、洋画の「影のある」手法を持ってきても表現できないんです。
だから、風景でも薔薇でも、僕は影を描かないです。

 

サロンへの出品、個展と、何故フランスを活動の場とされたのですか?

我々の頃は、洋画といえばフランスだったんです。
最初に行ったときに感じましたが、どこを見ても絵になるんです。
グレーの古い建物の前を、金髪の小柄な女性が歩いている。
そうすると、ぴったり絵になるんです。フランスに芸術が育つのは当たり前だなって思いました。
僕は、サロン・ドートンヌの会員になっているんですが、セザンヌの時代から、あそこで育った人が沢山いましたし、
日本では藤田嗣治などもそうでしたね。
ですから、日本の中でモタモタしていてもしょうがないと思って、この会に出品しました。
サロンに出品していると、世界中の作家の絵を沢山見ることになるわけですし、いろいろな描き方を見ることができ、
また画家との交流もありますから大いにプラスになりました。

 

舞妓を描いてみたいと思われたきっかけは、京都がお好きだったからですか?

ヨーロッパの古城展を京都のデパートで続けているうち、日本の伝統に触れ、深い美しさに打たれました。
その象徴の一つである日本の舞妓に興味を持ち、点描画法で舞妓を描いている作家はなく、描いてみたくなり、
お客様の繋がりで舞妓さんに会うことが出来ました。
「佐藤さん、薔薇も花だけど、これも花だ」の言葉に意を強くし、30年程前より点描での舞妓の制作にかかりました。
顔の表情、着物の美しさ、点描にのみ出来る表現、僕だけの顔(表情)を目差しているんです。
そして生き生きとした僕の理想の舞妓に少しでも近付いていければと思います。
この度の個展では、その作品を皆様に観て頂けることを楽しみにしています。

 

先生の作品のファンの方から今までに言われたことで、もっとも嬉しかった言葉など、お聞きしてみたいのですが。

仕事でくたびれて帰ってきて、応接間のソファーにデンと座って
先生の絵を見ると疲れが取れるんだよって言われたときは、すごく嬉しかった、本当に。
誰もいなかったら、涙が出たかもしれないくらい嬉しかった。そういう絵を描きたいですね。
また、僕の描いた絵が欲しくて、年金をコツコツ貯めて買って下さった方もいました。
そういう時は嬉しいですよ、絵描き冥利っていうかね。
だから、お世辞なんかいらないんです。本当にそうやって喜んでくれる人がいるだけで。

 

 

2010年10月 ギャラリー通信31 インタビューより

 

     
    ↑このページのトップへ
     
 
会社概要個人情報保護について採用情報 サイトのご利用についてリンク